5月下旬、岐阜県恵那市を深夜に出て、長野までの約220キロを軽自動車でのんびり走った。驚いたことに、この季節は午前3時過ぎには東の空がうっすら茜色になりだしていた。ちょうど安曇平を走っていると、東方の美ヶ原や高ボッチなどの山の端の輪郭が分かるようになった。
もうじき6月だというのにとても肌寒い中を走り、4時過ぎにはようやく長野平に入ったけれど、千曲川の川面から川霧が猛烈に立ち上っていた。川べりでは一面の霧だったけれど、離れると、写真のように千曲川の場所が遠目でも分かるほどだ。
こうした川霧は底冷えする真冬によく見られる。川の水は大気に比べて冷えにくい。このため、冷たい大気の中を相対的に暖かい川が流れると川面から一斉に霧が立ち上がるようだ。
今まさに、ようやく山の上に太陽が顔を出そうとしてする東の空・・・、川霧のはるか上空を飛行機雲が一筋伸びていった。寒さの原因は上空の冷たい大気のせいらしい。
となると、西の空も気になる・・・。
西方は上高地からの犀川が長野平に流れ込んでくる。その谷にも遠目に川霧が見えたが、それよりも鹿島槍ヶ岳の雄姿が目を引いた。
ちょうど顔を出した東の太陽に照らされて、茜色に染まった北アルプスの山だ。その下に、ちょうど私の自宅がある辺り、犀川の川岸に生育しているニセアカシアの白い花がびっしりと咲いていた。この時だけは、同じように茜色に染まっていたが、私が大学時代に昆虫調査に通った北アルプスでは、初夏を感じさせる懐かしい白い花だ。
北アルプスの山々にはまだたくさんの残雪が見えていた。
春ではない、信州の冬と夏が同居する季節。
まだまだ寒暖が繰り返されるのだろう。その後ろで。自然が沸き立つような暑い夏がこっそり影を潜めているような・・・・・・そんな5月の終わりの早朝だった。

